髭の意味

若い頃は髭が薄かったけど、歳を重ねる毎に濃くなってきた。確かはじめて生やしたのは、浪人の頃だったけど、何か口の周りに黴が生えているような感じだったので、一箇月くらいで剃った覚えがある。でも唇の下の髭だけはずっと生やしていた。ブルースやソウルのミュージシャン(その影響で忌野清志郎も)が生やしているのを真似して、周りでも「ブルース髭」と呼んで生やしている奴が何人かいた(アメリカでも「ソウル・パッチ」と呼ぶと聞いたことがある)。
口髭や顎髭を生やしだしたのは、23、4歳くらいだったか。モッド〜パンク系の格好をしている時には、基本的に生やしていなかったけど、その頃レゲエ・バンドに入ったこともあって、その手(ラスタじゃなくってラガマフィン系)の格好をしてた頃だろう。恒常的に坊主頭にし出したのも同じ頃だったと思う。たまに全部剃ることはあっても、それからは生やすことが多くなった。
←ここ半年位は、この髭型
これは何て云う髭型だろうと検索してみたら、こんなサイトがあった→ひげ。形としては「カストロ」だけどちょっと違うな(フィデルさんは長くてもじゃもじゃだし)。「かこみ」って奴かな。しかし結構笑える髭型の名前も多い。「かこみ」「まえかけ」さらには「聖徳太子(!)」。


さて、髭ってのは、文化的意味作用が強いもんで、(1)ムスリムシーク教徒やラスタファリアンのように宗教を表象する場合もあれば、(2)ヒッピーのように「自然」を意味する場合もある。(3)評論家、大学教員、アーティスト、広告やTVなどのいわゆる「業界」などに髭を生やした人間が多いのは、いわゆるビジネスマンなどの「堅い」職業ではないということを意味しているだろう。ネクタイ+スーツ率と髭率が反比例しがちであることからもそれは解る。大学教員といっても、法学部や経済学部の人は髭率が低く、文学部には高い気がする。もっと細かく言えば、美学の人の方が美術史の人より髭率が高い。とまあ、いろいろあるが、何といっても髭の「意味するもの」といえば、やはり(4)マスキュリニティ(男性性)であろうか。
顧みて自分自身の髭の意味するものは、まあ(4)のつもりは毛頭なく、多分(3)なんだろうとは思うが、(4)と見られないとは限らない(さらに坊主だし)。もしかしたら無意識に男性性を表象したいという気持ちがあるのかもしれないけど、まあ(3)と言うことで理解して頂きたいと思っている。


日本の歴史を振り返ってみると、男性が髭を生やす時期として特筆すべきは、戦国〜江戸初期と明治期である(それ以前もだいたい生やしているはいるけど、目立つ髭を生やすのはという意味で)。で、江戸期は、確か法令かなんかで、禁止されている筈である。このことの含意について論文を書いているアメリカの日本史研究者がいた筈だが、思い出せない(ロナルド・トビ氏だったかな)。戦国〜江戸初期における髭は、間違いなく男性性の表象であろうし、明治期のそれについては、欧化と男性性(近代的/ヨーロッパ的マスキュリニティの移植)が入り交じったものであることは確かだろう。それに挟まれた江戸期の髭の禁止というのも興味深い。
ここ十年くらい髭を生やす人は増えてきているが、この辺りはどう読むといいのかな? 髭の文化史みたいな文献って絶対あると思うんで、探してみよう。