ロンドン・ロックン・ロール・ショー

畏兄fukayaさんが、mixiで「モナ」ネタに絡めて紹介していたボ・ディドリーのライヴ映像がえらく格好良いので、調べてみたらＤＶＤが出ている。アメリカ盤だけど、リージョン・フリー（えらい！）だったので取り寄せたら、これが最高だった。

London Rock & Roll Show [DVD] [Import]

出版社/メーカー: Mvd Visual
発売日: 2001/11/20
メディア: DVD
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面白かった点は、大きく分けて三点。

パフォーマンス。1972年にイギリスではロックン・ロールのリヴァイヴァルが起こったようで、その機に50年代のトップ・スターたちを呼んで、ウェンブリー・スタジアムで行ったコンサートの記録フィルムである→The London Rock and Roll Show - Wikipedia。出演は、ボ・ディドリーの他に、ジェリー・リー・ルイス、リトル・リチャード、ビル・ヘイリー＆ザ・コメッツ、チャック・ベリーと錚々たるメンバー。リヴァイヴァルとはいえ、まだまだみんな40代（ジェリー・リー・ルイスは30代）で、元気いっぱい。しかも50年代と違って、ウッドストックを越えていろんな縛りが取れているので、不良中年たち、ここぞとばかりにやりたい放題。後ろにはマーシャル・アンプが二段積みで、チャック・ベリーが乗ってきて、それまでノーマルな音で弾いていたのをやおらアンプに近づき、一気にオーヴァードライヴを掛けるところなんか鳥肌もの。ジェリー・リーなんか一曲目から足でピアノ弾くし（ちなみに彼のピアノの独特の巧さというのも再認識した）。リトル・リチャードは、髪の毛おったてて、ドファンキーな装束で、さすがプリンスの先駆け。何と言ってもボの演奏がたまらない。ギタリストとしての彼の秀逸さも堪能できる上に、「モナ」における延々ワン・コードで盛り上がる呪術的なノリの凄み。ちなみにビル・ヘイリーは、相変わらずトッチャン坊やだったけど、バンド・メンバーに眼帯の悪そうなヤツがいてこれも必見。あと、ミック・ジャガーが、自身のロックン・ロール体験について語ったインタヴューも収録。
次に観客。もちろん大多数は、その時代の長髪＋ベルボトムであるわけだけど、アリーナ中央を占めるのは、テッズ＆ロッカーズのやばそうな連中。ロッカーズは60年代の残党（リーゼントではなく、ヘルズ・エンジェルズ風の長髪が多い）だろう。で、テッズ（テディー・ボーイズ）は、50年代のサブカルチャーだから、一旦絶滅したあとのリヴァイヴァルである（その後のモッド・リヴァイヴァルとかスキンヘッド・リヴァイヴァルなどなどの先駆け。サブカルチャーのリヴァイヴァルというのは、ブリコラージュの問題などと絡めて、いつか講義でゆっくり扱ってみたいと思っている）。ヴィヴィアン・ウェストウッドとマルコム・マクラーレンが、ブティック、レット・イット・ロックを開店して、テディー・ボーイ・リヴァイヴァルを仕掛けたのが、71年のことだから、このときのテッズ集団は、その仕掛けに乗った連中だろうなと思って見ていたら、案の定会場内に、レット・イット・ロックの売店があって、Ｔシャツとかグッズとかを売っている。で、それを売っている男女がおそらくヴィヴィアン＆マルコム。女性の方は、若すぎてヴィヴィアンかどうかは、実は定かではない（違うかも）のだが、ハンチングを被った男は、顔ははっきりとは見えないものの、特徴ある声は、間違いなくマルコム師匠。思わず喜んでしまう。
- http://www.fashion-j.com/mt/archives/004404.html
- ロッカーズ - Wikipedia
- 50年代のテッズ、60年代のロッカーズの様子を伝える写真集も是非→
- そういやダイアン・アーバスの写真にも、若いテッズを撮影したものがあったなあ。あれは、アメリカに輸入されたテディー・ボーイ・リヴァイヴァルだったんだろうか。
最後は前座。御大たちを迎える立場としてイギリスのミュージシャンが前座を務めていて、ハインツっていうのは、まあまあのロックン・ロール・シンガーで取り立てて言うほどのことはない（キャリアはあるらしいが）のだが、もう一人のスクリーミング・ロード・サッチというのがモーレツに面白い。いきなりビキニ姿の女性たちに担がれた棺桶から登場。普通の４倍くらい長いシルク・ハットに白塗りメイクに緑の髪。ホラー風の演出で、要するに元祖クランプス〜サイコビリー。音楽もガラージ・パンク風で結構良い。調べてみると、ビートルズよりデビューが早いノヴェルティ系――つまり色物――ロックン・ローラーらしい。古株だけにデビューしたての若手の台頭に我慢ならなかったらしく、ＭＣで「アリス・クーパー、かかってこんかい」って言ってるのには笑った。そのあと、万年泡沫候補の政治家になったらしく、つくづく面白そうな、そして近寄りたくないおっさん→スクリーミング・ロード・サッチ - Wikipedia。